月夜見 
残夏のころ」その後 編

    “晩秋の訪れに”


随分な暑さの夏が過ぎ、残暑も長引いての。
いつまでも秋物の出番がないなぁ、
衣替えのときだけ涼しくなるけど、
それでもまだまだ上着は要らないのよねぇという、
結果、例年とあまり変わらない10月へ突入し。
そしてそして、

 「気がついたら、
  半端な薄い上着じゃあ間に合わない位に
  なってるんだよなぁ、これが。」

そうかと言って、
仰々しいコートじゃスカジャンじゃは まだちっと大袈裟だし。
制服との重ね着ってなると、
カーディガンか薄いセーターが限度だし。
今から そこまでモコモコになんのもなぁ。
女の人は
薄手のストールとか
小じゃれた巻き方してしのげるそうだけど。

 「男はそういう訳にもいかんしなぁ。」

え? いや、うん。
ウチの学校は、制服がある以上はっていう範囲で、
マフラーや手套も、
かび?派手じゃないもの、なんて規定があるけどな。
だからかな、スカーフみたいに薄いの、
襟元にこそこそって巻いてる子もいんぞ?
あんな薄いのでも暖ったかいらしくてサ。
気がついてるせんせえも いるみたいだけど、
こそこそっていうのからして、
洒落めかしてはない証拠だしって大目に見てるみたいだぞ。

 「………え?」

いや、うん。
俺はどっちかって言うと、寒いのはへーきって言うか、
そうそう、ぐ〜んって寒くなったら
いっそぐるぐる着込むからなぁ。
駆け回るとか、店での作業に入るとか、
身動き取れんとなったら、そりゃあ脱ぐけどサ。
そういう時って、すぐにもポカポカ暖かくなるし。
え? 子供体温だから?
あ、それってエースが言ったんだろ。マルコ兄ちゃん?
だあもう、あいつらめ〜〜〜っ。//////

 「うん、だからサ。
  柔道の朝練とかで早く出るときに、
  朝早くは寒いなぁってブルブルッてなるけど、
  まだそんな、凄げぇ寒いってこたあねぇ。」

ただ今はサ、
柔道の練習ってだけじゃない早出もあるんだよな。
そうそう、運動会とか文化祭の打ち合わせとか。
え? うん、もう運動会は済んだぞ。
つか、見に来てくれたじゃん。
え? 運動会って言い方がおかしいって?
何でだよ〜、それってシャンクスも言ってたぞ。
いいじゃんか、うんどーかいで。
今度のは、うん、文化祭だぞ。
がくげーかいじゃねぇよっ。//////
第一、オレ 別に劇とか出ねぇしよ。
うん。そいでもな、
設営の打ち合わせとか、クラスでやる模擬店の準備っての?
パネルにペンキ塗ったり、テーブルクロスにする布を切ったり、
テントに飾る花をティッシュで作ったり。
何でか することって山ほどあってよ。
放課後だけじゃ足りねって、
朝の手伝いにも出て来いって言われてさ。
練習するならともかくよ、
手元だけチマチマって動かす仕事だと、
あんまり暖かくはなんねぇんだよなぁ。



  ……ってな話を、
  昨夜の寝しなだったかに
  かかって来た電話でしたんだけどもさ。


  「良かったら、これ。」
  「うっとぉ。////////」


時々、すんすんって鼻すするみたいなことしてたんで、
もしかして風邪の引き始めかなぁって思ってたって。
でもさ、マフラーとかするのは、
もっと寒くなってからだったよなぁって思い出して。

  凄い薄手の、紺色の
  ストールっていうのかマフラーっていうのか、

 「いやあの、ウチぃ帰る途中にある洋品店で、
  窓んトコに最近になって並べられてて。//////」

こうまで薄いのだったら、邪魔にはならんかな、
襟元を暖めるのって、
それだけで全身に回るっていうしなとか。
そんなこんな思ってたら、お店のおじさんが、
知り合いのよしみだ、半額にしてやるとか言い出して…と。
ゾロには珍しく、たくさん喋って説明してくれたんだけど。

 「………それってきっと、
  カノ女にあげるんじゃないかって思われてんぞ?」

 「やっぱ、そうっすかねぇ。」

なんかニヤニヤしてたもんなと、
髪を短く刈った後ろ頭を大きい手でわしわしと掻いてたのが、
何か照れ臭そうで、可愛いなぁって思えたんだよな。///////
それもあったからかなぁ。
五月の俺の誕生日、知ってたのに何も出来なかったから、
遅出しのプレゼントだと思って
貰ってくんねっすか?って言われたの、
えっと、うん…ってゆって、受け取ったんだけど。


 「あ…………。」
 「えっ?」


 いや、えと、何でもないない。うん、気にすんなって。
 慌てて誤魔化したルフィくん。
 そういえば、ゾロの誕生日って11月じゃなかったか?
 いやあのえっと、
 前に訊いたことが あったような無いような。//////

だったら やった間に合うぞと、
こっそりと小さくガッツポーズを取ったルフィくんだったの、
少なくとも、
一緒にいた剣道部のお兄さんには気づかれなかったようですが。


 「…店長、ややこしいちょっかいかけたらダメですからね。」
 「何だよ、その決めつけようはよ。」
 「ダメったらダメです。
  何だったら銀嶺庵のご主人に言い付けますからね。」
 「う…。」


   副店長、ナイスだっ。(笑)



   〜どさくさ・どっとはらい〜  2012.11.01.


  *かわいらしい バカップル未満の坊やたちを
   久々にいかがでしょうかvv
   ウチでは“ルフィ親分”のお話と タメ張るくらいに
   そりゃあもう焦れったいシリーズですが。
   当初はただ
   ゾロの方が学年が下だとどうなるかへ
   リクいただいただけのはずが、
   まさか こうまで引き摺ろうとはねぇ。
   一応という言い方も何ですが、
   確か“ちう”もしてなかったか君ら。
   どっちが先に距離を詰めることやら。
   この際、坊様たちと競争しますか?(おいおい)


ご感想はこちらvv めーるふぉーむvv

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